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「ぷぅーーー!」  大勢の人の中から、不思議な鳴き声が聞こえてきた。 ――俺はこの声を知っている。 「はっち……」  涙目になりながら、その声のする方向を見つめた。  四本の足でひょこひょこと、人混みを掻き分けてステージに近づいてくる。   「猫だ!」 「猫がいるわ!」 「あの猫、何か咥えているぞ?」  会場のざわつきが大きくなった。  はっちはステージにぴょんっとのると、俺の足元に来た。  その口元には、俺のピックが咥えられていたのだった。 「ぷぷ」  俺はしゃがんではっちからピックを受け取る。 「はっち、ありがとう」  はっちはぷふぅと鳴くと、俺の足元で丸くなった。 「あの猫ちゃん、かわいいぃ」 「バンド名と一緒だね」 「なにこれ、演出なのかな?」  みんなの視線が、はっちに釘付けだった。
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