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「やった、ラッキー!」 俺は警察官に向かって叫んだ。 「おーい! こっちだこっち!」 猫又の首根っこを掴みベランダに出て、警察官に大きく手を振った。 「おーい! おーい! この化け猫を連れて行ってくれ!」  警察官は、声に気づいて顔を上げた。顔をよく見ると、ここら一帯を昔から見回りしてくれる、よく見かけるおっちゃんだった。登下校の際にすれ違ったとき、俺は必ずこの人にあいさつをするのだった。 「頼むよ、おっちゃん!」  おっちゃんは最初とても驚いた様子だったが、すぐにピシッと背筋を伸ばして敬礼してくれた。そして自転車に乗ってパトロールを再開。ついにはどこかへ行ってしまった。 「そうじゃないんだよぉぉぉ……」 俺は涙目になった……助けてほしかったんだよ、おっちゃん。 そのとき、ツンツンッと洋服の裾を引っ張る感触があった。振り向くと猫又はいつの間にか部屋に戻っていて、「大丈夫か」と気遣ってくれた。 ……案外こいつはいいやつなのかもしれない。俺は鼻をすすった。  
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