1/2
前へ
/49ページ
次へ

「僕は姿を見せる相手を選ぶことができるんだ」 その猫又は落ち着いた声で言った。 背負っていた謎の黒いケースは、いつの間にか床に置いてある。 俺は覚悟を決めて、頭に浮かんだ疑問をそのままぶつけた。 「どうして俺の前に現れたんだ? 何が狙いなんだ! まさか……俺の命か? 爺ちゃんから聞いたことがあるが、化け猫は人を喰うらしいな」 猫又は何も言わなかった。 「最初に言っておくが、俺はそんなに弱くないぜ? 昔、柔道やってたんだ」 「……そんなにカッカしないでよ」 その猫又はゴロンと床に転がった。 「ほら、僕のお腹を触ってごらん? たしかに今は猫又の姿をしているが、その昔、僕がまだ普通の猫だった頃、お腹のさわり心地がシルクのようだと近所で評判だったんだ」
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加