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 猫又はとても真剣な眼差しで言った。 「ここら辺は僕の散歩道でね。よく通るから君のギターをほぼ毎日聴かせてもらったよ」 「な!」 「君は、ギターが下手っぴだ」 俺は顔が赤くなるのを感じた。窓を閉めて練習していたのに、音が漏れていたのか。 「ぼよよ~ん、ぼよよ~んと。何とも聞き苦しい。まるでお化けでも出るんじゃないかと感じるくらい下手糞だ」 ……何だよ、それ。 俺はキッパリとした猫又の口調に多少のイラつきを覚えながら、心の中でつぶやいた。 「だからギターを弾くコツを……」 俺はその猫又の言葉を無視し、大声で言った。 「そんなに言うなら、お前が弾いてみろよ!」 そう言った理由はただ一つ、俺はかなり腹が立ったのだ。突然不法侵入されて大好物の食べ物を喰われ、それから下手くそだと酷評されれば誰でも腹が立つだろう。俺はまだ優しい方だと思った。 叫んだついでに「猫の手でギターなんて、弾けるわけないけどな」と意地悪く付け加えた。 「……分かった。少し待っててくれ」
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