2/2
前へ
/49ページ
次へ
「え?」 俺は耳を疑った。この猫又、『分かった』って言ったよな?  ———弾くのか、ギターを!? その猫又は、持っていた黒いケースから中身を取り出した。そこにはおそらくマホガニー材であろう小さなアコースティックギターがあった。 「さて」 その猫又はクッションに腰を掛けて脚を組み、ギターを構えた。 「何かリクエストある?」 「……じゃあ、このバンドの新曲弾いてみろよ」  俺は充電が60%くらいまでされたスマホで、推しバンド「Switch」の新曲「のんきな午後」を流した。そのとき猫又はほんの少しだけ黒目を大きくしたように見えたが、気のせいにも思えた。  曲を全て聴き終えると、猫又はギターを構え足でリズムを取りだした。 顔つきが変わる。目が爛々と輝いていて、口元は引き締まった。  そこで俺が聴いたのは、完璧な曲の再現———だけではなく、柔らかく繊細な音色、そして表現の大胆さ。曲の魅力だけではなく、ギター本来の音が最大限に引き出されているということが、素人の俺でも解った。  長くなったが、つまり俺のハートは猫又の演奏に鷲掴みにされたのだった。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加