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「え?」
俺は耳を疑った。この猫又、『分かった』って言ったよな?
———弾くのか、ギターを!?
その猫又は、持っていた黒いケースから中身を取り出した。そこにはおそらくマホガニー材であろう小さなアコースティックギターがあった。
「さて」
その猫又はクッションに腰を掛けて脚を組み、ギターを構えた。
「何かリクエストある?」
「……じゃあ、このバンドの新曲弾いてみろよ」
俺は充電が60%くらいまでされたスマホで、推しバンド「Switch」の新曲「のんきな午後」を流した。そのとき猫又はほんの少しだけ黒目を大きくしたように見えたが、気のせいにも思えた。
曲を全て聴き終えると、猫又はギターを構え足でリズムを取りだした。
顔つきが変わる。目が爛々と輝いていて、口元は引き締まった。
そこで俺が聴いたのは、完璧な曲の再現———だけではなく、柔らかく繊細な音色、そして表現の大胆さ。曲の魅力だけではなく、ギター本来の音が最大限に引き出されているということが、素人の俺でも解った。
長くなったが、つまり俺のハートは猫又の演奏に鷲掴みにされたのだった。
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