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「すげぇ」 俺はその音色やテクニックに完全に魅了されていた。 猫又は俺の拍手を待たずに、弾き終えるとすぐにこう言った。 「あともう一曲弾こう。実は僕、これから弾くこの曲のタイトルを知らないんだけれど、人の子の前で弾くとなぜか皆一斉に笑顔になる。魔法の曲なのだ」 そう言った猫又はギターを構えなおし、小さな手であの有名な曲を弾き始めた。 「なるほど……」 その演奏を聴きながら、俺はニヤリと笑った。たしかにこれは子どもに受けがいいかもしれない。曲が終わると、俺はあることを思いついた。 「なぁ、この曲のタイトル教えてやるよ」 「本当に!」 猫又は金色の目をキラキラと輝かせた。 「その代わり」 俺は顔をずいっと猫又に寄せた。 そしてまるで神を拝むような体で、パンッと手を合わせた。 「俺にギターを教えてくれ!」
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