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「……君、さっきのけんか腰は何処に行ったの」 「うぅ、それはごめん」 俺はどうしようもなくなって謝った。 「本当にごめん。ギターさ、独学でやってるんだけど全然上達しないんだ」 困ってるんだよ……と頭を下げると、猫又はふむふむと頷いた。 「……そうだね。まあ、もとからそのつもりでここに寄ったから、教えるよ」 「え! 本当に!? ありがとう」 「レッスン料は、あたりめね」 「え、それはちょっと……」  俺は大好物のあたりめを要求されて、かなり渋った。 「『それはちょっと……』じゃない! 人に教えを請うのに、何の対価も払わないつもりなのかい、きみは」  人って……猫じゃんか、俺は思った。 「それと」 猫又は続けた。 「曲名は、今ここで教えてもらうよ」 今度は猫又が、ずいっと顔を寄せてきた。
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