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 それもそうだね……とつぶやきながら猫又はベランダに出た。 「また来るね」 そう言って猫又が外へ飛び出ようとしたとき、俺は慌てて引き留めた。 「なんだい?」 猫又はクルリと振り返る。 「俺は蓮。市村 蓮(いちむら れん)って言うんだ。これからよろしくな。それと、俺はあんたのこと何て呼べばいい?」 少しの沈黙のあと、猫又は言った。 「僕の名前は、はっち。はっちと呼んでくれ」 そういうと、はっちはベランダの柵をひょいと乗り越えて、タッタッと走って行ってしまった。  今思うと、はっちが俺にギターを教えようと思った理由を聞いておけばよかった。あらかじめ言っておくが、このあとその理由を聞く機会は訪れない。 当時ギター馬鹿だった俺は、ただのラッキーだと思ったのだ。 To be continued...
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