2/3
前へ
/49ページ
次へ
 話は変わってしまうが、俺は春休み中に、最近メジャーデビューした超クールなロックバンド「Switch」の大ファンになった。そのバンドのギタリスト、八助(はちすけ)の奏でるアコースティックギターを聴いて、天地がひっくり返るような衝撃を受けたのだ。  俺は、ギタリスト八助のようにカッコよくギターを弾けるようになって、絶対に、絶対に……。 「軽音部に脚光を浴びせるんだ!」  教壇の前に立ってそう意気込んだときだった。 「……早く練習を始めたらどうなんだい?」 「うぉ!」 ……マジでビビったぜ。窓の鍵を閉め忘れていたのだろう、猫又はっちが気づかぬうちに部室へ入り込み、俺の前に立っていた。 「どうして俺の居場所が分かったんだ?」 「君の……(れん)の匂いを追ってきたのさ」 「え、(にお)い!? 俺って……(くさ)いの?」  俺は少なからずショックを受けた。 「いや、そういう意味じゃないんだけれど……」  はっちは呆れた顔をした。  その答えを聞いて安心した俺は、改めてその猫又を見る。 今日も小さなギターケースを背負っていた。    
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加