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 はっちは、グラウンドを走り回るサッカー部員たちと俺を交互に見たあと言った。 「このあと、教室に学生は来ないのかい?」 「来ない」  キッパリ言った。それから、少し不安になった。 もしかして、友達がいない奴だと思われたかもしれない……。  その返答を聞いたはっちは、怪訝な顔をした。 「この教室に来る途中、楽器を持ったかなりの人数の生徒たちを見かけたよ。彼らは君と違うのかい?」 「あぁ」  俺はその学生たちは吹奏楽部の部員であることを説明した。それから俺自身は軽音楽部の部員であること、俺以外は幽霊部員であることを伝えた。  説明し終えると、そういえばとバッグに手を伸ばした。はっちから言われていたレッスン費用のことを思い出したのだ。 「はっち、あたりめ食べるか?」  あたりめ、というワードを聞いた瞬間はっちの目がキラキラと輝いた。 「ぷぅー! 食べる食べる!!」  俺はその返事を聞いた瞬間、腹を抱えてケラケラと笑った。 ぷぅ? こいつ今ぷぅって言ったよな……。 「お、お前ぇ……」  もっ、もうダメだ……。腹筋が超痛い! 「……なんで返事が『うん』でも『はい』でもなく、『ぷぅー』なんだよっ」  はっちは何を言われているのか分からないといった顔をしているが、俺は構わず続けた。 「喋る猫も、ギターを弾く猫も初めてみたけれど、『ぷぅ』って鳴く猫も初めて見たぜ」  俺はガサゴソと通学バックから、あたりめを一パック取り出した。それをはっちの目の前に掲げて、こう言う。 ……あたりめは、俺の大好物だから。 「、な?」 それを聞いたはっちは、不服そうな顔でぷぅと鳴いた。
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