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 あたりめを食べ終わったあと、猫又はっちのレッスンが始まった。  練習する曲はもちろん「Switch」の曲。どの曲を教えてもらおうか迷ったが、やっぱりあの日に聴いた「のんきな午後」を弾けるようになりたいと思い、はっちにそうお願いしたところ、快く承知してくれたので早速レッスンが始まったのだ。 「そうじゃないよ、蓮。もっと左手の指を立てないと、弦が指板から浮いてしまっているよ」  はっちがぷにっとした肉球で、弦に触れている俺の左手を抑えた。 「けっこう、この曲難しいんだな」 額から汗がたらりと垂れる。 「当たり前だよ。この曲は本来、上級者向けなんだ」  はっちは自分用の小さなギターを構えなおした。  俺とはっちは、向かい合わせで椅子に座っていた。はっちが指でどんなふうに弦を抑えているのか、見て真似して覚える。そういうやり方で教わることになった。と言うのも、はっちが即興で弾いた曲なので楽譜は存在せず、彼が弾く様子を見て覚えるしかなかったからだ。  曲の初めのギターパートは、比較的伴奏が多く楽に弾けていた。しかし、曲の途中でギターソロになった途端、指が動かなくなり全く弾けなくなってしまった。
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