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「——ここは早く指を動かさなきゃいけなくて、とても難しいから、最初は焦らずにゆっくり練習するといいよ」 はっちはギターを椅子の上に置いて、俺の隣にきた。 「そうそう、いい調子。音は間違ってないよ」  そして、リズムはもう少しかな……とか、そろそろチューニングをし直したほうがいいかもしれない……とか、隣でアレコレ言い出したので、俺は少し疲れてきたのだった。 「ごめん。少し休憩したい」 「ぷぅ。僕は水が飲みたくなってきた」  水飲み場に案内してくれと頼まれたので、俺はギターが倒れないように椅子に立てかけ、はっちと一緒に近くの水飲み場へ向かった。   「あれだよ」  俺は六つの蛇口が横にずらりと並んだ水飲み場を指さした。はっちは足音を立てずにササっと台の上に飛び乗ると、二又に分かれた長い尻尾で丁寧に蛇口を捻り、ぴちゃぴちゃと水を飲み始めた。 「……か、かわいい」  思わず呟いた。さっきまでアレコレ指導をしてきた先生モードのはっちと違い、無邪気に水を飲んでいる姿はショート動画でよくみる可愛い猫そのものだ。そんな姿を見ていると、はっちが猫又だという事実をほんの一瞬だけ忘れた。
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