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 そんなこんなで水飲み場から帰ってきた。 それから椅子に座りレッスン再開、と思いきやはっちが真剣な顔で尋ねてきた。 「……蓮はどうしてギターを弾こうと思ったんだい?」 「え?」 「どうしても気になったんだ。友達と一緒に始めたわけでもなさそうだし。この学校に入学したんだったら、さっき言っていたその吹奏楽部とやらに入った方が良かったんじゃないか?」 「それは」  そこで俺は、何故だか急に担任の先生の白けた顔を思い出した。 はっちはこの学校と関係がない。でも、本音を話したら先生のときのように呆れられるんじゃないかという不安が急に頭によぎった。俺はその不安を打ち消すように、早口で話し始めた。 「俺には推しのギタリストがいて、その人みたく弾けるようになりたいんだ」 「……そのギタリストは誰なんだい?」 「もちろん、Switchのギタリストの八助さ」 「なぬ!?」 「……はっち、どうしたんだ?」 「え!? いや、あの——」  どうやらはっちはとても動揺しているようだ。二つに分かれたしっぽがボワッと大きくなっている。下を向いてしばらく何かゴニョニョ言っていたが、ついに顔をあげた。 「八助は、やめときなよ」 「っなんで」  そんなこと言うんだよ……。  はっちにも否定されてしまった。正直ショックだ。  心の中にどす黒い何かが渦巻き始める。別にどんなギタリストが好きだろうが、俺の勝手なのに。どうして担任の先生もはっちも、俺がやってみたい、挑戦してみたいと思ったことを真っ先に否定するのだろう。家族——特に妹だって俺がギターを弾くことについて、あまりよく思っていないみたいだし。
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