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「Switchのギターは、とにかく難易度が高いんだ。聴く分にはいいけど、弾くとなると……」 「八助のギターじゃないと、ダメなんだよ!!!」  立ち上がって、俺は叫んだ。 あ、やってしまった……。  はっちは驚き飛び上がったので、彼のギターは床に落っこちた。  それでも俺は続けた。なぜだか知らないが、はっちには俺の気持ちを——先生に解ってもらえなかったことを——理解してもらいたかったのだ。 「俺はSwitchの曲を聴いて、今までの人生で感じたことのない衝撃を受けたんだ! 俺が八助みたくなれば、この寂れた軽音部にも、間違いなくスポットライトが当たるだろう! そしたら……」  ギターを一緒に楽しむ仲間ができるかもしれない……。そう言った瞬間、俺は自分が泣いていることに気が付いた。先生に冷たくあしらわれた時も、独りでずっと空き教室で練習しているときも平気だったのに。俺は突然滝のように出てきた涙を抑えることができなくなった。 「……君はまだ、こどもなんだな」 二つの尻尾で俺の涙を拭いながら、はっちは優しく言った。 「今日は君のために、その八助とやらの曲をたくさん弾いてあげるよ」 さぁ座って、とはっちが俺を見た。俺は言われるがままに椅子に座りなおした。
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