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「え! やだよ、せっかく「のんきな午後」を弾けるようになってきたのに」  俺は困惑した。しばらく弾かないでいて忘れてしまったらどうしようと思うと、不安でしょうがなかった。 「……じゃあこのまま弾いて、もっと手を痛めたらどうするんだい」 「……それは困る」 「だろう? だからしばらくギターはお休みだ」  はっちは、今週の土曜日に楽器店に行こうと言った。俺は拒否する理由もないので、すぐに了解した。  はっちはすぐにギターを片付け、今週の土曜日、午後二時に駅前の猫村(ねこむら)楽器店前に集合、とだけ言うと空き教室の窓からひょろりと外へ出た。 「はっち! あのあたりめを」 俺が窓から身を乗り出して叫んだとき、彼の姿はもうなかった。 「……しょうがない、今日は家に帰るか」 俺はギターを片付け、空き教室を後にした。 その日の帰り道、俺は「のんきな午後」を小さな声で歌いながら帰った。 なぜだかとても楽しい帰り道だった。 To be continued...
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