3-2. こぼれ話③

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△ 「うぅ、目が痛い」 「頑張れ、お兄ちゃん!!」  俺は玉ねぎと格闘してするのをやめて視線を横に移した。  妹は楽しそうに人参の型抜きをしている。星や花、ハートやクマ、ウサギなど可愛らしくなった人参がどんどんお皿の上に並べられていく。  俺が小学生の頃はカレーの人参は乱切りだったけど、妹が生まれてから型抜きをするのが当たり前になった。  というのも、妹は今より幼い頃、人参が大っ嫌いで殆ど食べなかったのだ。しかし可愛く型抜きをしてあげると、なんとパクパクと食べた。いわゆる食わず嫌いというヤツだった。  その名残で今でも我が家のカレーには可憐な人参が入っている。俺の時よりも随分と華やかになったものだ。 ——色々と考えているうちに時間が過ぎてしまった。  さて、もう一回頑張ろうと玉ねぎに視線を戻したとき、妹が口を開いた。 「お兄ぃはいつまでギター弾くの?」  玉ねぎを切る手が止まる。 「……花音は俺がギター弾くのが嫌なのか?」 「うん」  やっぱり……。思わすため息をついた。 「俺のギターが下手すぎるから、聴くの嫌なんだよな。ギターの音、嫌いなんだよな。本当にごめん。でも日曜日の練習は、少しマシになってると思う。ギターの先生に教えてもらったから」  そう言って妹に再び妹に視線を移した。なぜかキョトンとした顔をしているが俺は続けた。 「お願いだから、ギターを嫌いにならないでくれ!」  
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