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「ここだよな、猫村楽器店」  土曜日の午後二時ちょっと前に、はっちに言われた楽器店に着いた。俺は駅前のこの楽器店は初めて訪れた(アコースティックギターを買ったのは別の店だった)。  ここは県内で一番規模の大きい猫村楽器店なんだそうだ。たしかにアコギを買った店と比べると、だいぶ広い。そして商品も倍以上ある。  店舗入り口には三台の電子ドラムとモニターが待ち構えていた。  やっぱりドラムはめっちゃでかい。威圧されるような感じがする。これを叩く人は、やはりガタイのいい人なんだろうか。見た限りでは、小柄な女性に不向きそうだ。  店舗の正面から向かって左側を見ると、エレキギターとアコースティックギターが合わせて五十台くらいスタンドに立てかけてあったり、壁に吊り下げられたりしていた。  これらは電子ドラムと違って、カラフルかつポップな雰囲気で馴染みやすそうだ。 ——そういえばエレキギターって、アコースティックギターと同じように弾けるのか……?  そう疑問に思っていると、エレキギターのコーナーに、別な何かを見つけた。 「ん? 何だあれ」  エレキギター付近に設けられたガラスケースの棚を発見したので、はっちとの待ち合わせについてすっかり頭から抜けてしまった。  近づいてみると、その棚には「つまみの付いた小さな鉄の箱」がいくつも並べられていた。 「こいつらも随分とカラフルだな。どれどれ……。細長いのと、四角いのがあるぞ」  ブツブツと言いながら一つ一つ丁寧に眺めていると、「それは『エフェクター』よ」と背後から声をかけられた。
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