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「ありがとうございます」  ギターの弦を選ぼうと手を伸ばしたとき、エレキベース弦の下にある、もう一つの存在に気づいた。 ——こっこれは……。 「八助のピックだ!!!」  俺は声を抑えることができなかった。  というのも、弦コーナーの下にピックコーナーがあり、そこに「Switchの八助が愛用!」という謳い文句のピックが置いてあったのだ! 「市村くん、Switch好きなの?」 俺の大声に、井口さんは目を丸くしていた。 「はい、八助のファンなんです!」 「そうだったの……」 彼は少し考えるそぶりをして、口を開いた。 「……あと三十分くらいここにいたら、良いことあるかもよ」  井口さんはニコニコとしている。  良いことって一体何のことだろう。彼の意図はよく分からなかったが、はっちがなかなか姿を現さないので、しばらく楽器店の前で待とうと考えた。   「とここで待ち合わせをしていて、彼がまだ来ていないので、しばらくここにいます」  それからギターを背負い直して、その「良いこと」とは何か尋ねた。   「そのうち分かるわ……。それと、何か分からないことがあったら声をかけて」  じゃあ、と言うと井口さんはレジに向かって歩いて行った。
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