16人が本棚に入れています
本棚に追加
3
ギターを修理する間、はっちは店内を見てくると行ってしまった。一方俺はレジの近くでギターの修理が終わるのを待った。
十分くらいで井口さんは戻ってきた。
ギターを見せてもらう。弦高調整のほかに弦も張り替えてくれた。至れり尽くせりというやつだ。
さすがに申し訳なくなった俺は「お金を払う」というと、井口さんはこう答えた。
「いらないわよ」
「えぇ……」
「八助に頼まれたことだし……。それに、下手な修理してアイツ怒らせると後々面倒なの」
「でも……」
「そんなにお金を払いたの? 真面目というか、損な子ねェ……」
井口さんは感慨深そうな様子で、「じゃあこうしましょう」と言った。
「市村くんの初ライブチケット、私にタダでちょうだい」
「そんなんでいいんですか」
俺は驚いたのと同時に、少し焦った。軽音楽部は、俺を除いて全員幽霊部員だからだ。
「いいわよ」
「わ、分かりました。一番良い席をご用意します」
「言うじゃない! 楽しみにしているわ」
最初のコメントを投稿しよう!