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 ギターの指板に左手を添える。しかし弾けない。上手く弦を押さえられず、音が綺麗に出ないのだ。練習を始めて数か月が経った。ギターと一緒に購入した推しバンド「Switch」の楽譜はまだ一ページも進んでいない。学校の宿題よりも難しいソレは、俺の頭とを悩ませていた。できない。今日もできないぞ……。 「気を取り直して、少し休憩しよう」  俺はリビングへお菓子を取りに行った。それからあるものを見つけ、ニヤリとする。大好物の「あたりめ」を見つけた! 母と妹にはおやじくさいと言われてしまっているが、好きなものは好きなのだ。  俺はルンルン気分で部屋に戻り、あたりめを食いながらギターを弾いた(実際には音が出ていないからとは言えないのだけれど)。しばらく弾いていると、徐々にギターのボディに付いた指紋の汚れが気になってくる。俺は専用のクロスでそっと愛器(あいき)を磨いた。    そのときだった。
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