1/4
前へ
/49ページ
次へ

 そこには一匹の猫がいた。をムシャムシャと食べている猫が。 「俺のあたりめが……」 なんということだ。俺はどうしようもなく項垂れた。 「……いや、ちょっと待てよ?」  俺はようやくその猫が普通じゃないことに気が付いた。  まず、しっぽが二又になっている。それに加えて、背中にミニサイズのを背負っているのだ。 「ただの猫……じゃないのか?」  俺は高鳴る心臓を押さえつけ、そいつがあたりめを食べ終わるのを待つ。そいつはすぐに食べ終え、普通の猫のように毛づくろいを始めた。  白黒のハチワレ猫。首には唐草模様(からくさもよう)の首輪を付けていた。毛づくろいをするたび、チリンチリンと首輪についている鈴の音が狭い部屋に鳴り響き、俺の緊張感は極限まで高まった。  
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加