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3
――本番当日。
演奏場所は、体育館のステージだ。
俺は少し早起きして、学校に向かい、ステージに一人で立ってみた。
いつも体育の授業で使っているときと違って、大きく見える。
「今日はここで演奏するのか……」
大して高い場所でもないのに、足がすくんだ。
手がどんどん冷えていって、震えが止まらなくなる。
「――そこにいるのは蓮か?」
体育館の入り口から聞きなれた声が聞こえてきた。
目を向けると、弘が入り口に立っている。弘は外履きを脱ぎ、靴下のまま歩いて俺の方に来た。
「部室に鞄だけ置いてあったから、もしかしたらと思って来てみたんだ」
まさか本当にいるとは、と弘は笑った。
「弘」
「……なんだ?」
「弘は、緊張しているときどうするんだ?」
「蓮、緊張してるのか?」
「うん」
「そうか……」
弘はうーんと唸ったあと、こう言った。
「慣れるしかないな」
「慣れかよぉ」
俺は頭を抱えた。
「大丈夫だよ、弘。俺と優がいるから」
「……」
「一人じゃないんだ。何とかなるさ!」
ほら、と弘が立つように促した。
「最後にちょっとだけ、練習しようぜ」
「あぁ」
そう言って先を歩く弘を、俺は走って追いかけた。
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