3

2/3
前へ
/107ページ
次へ
 本番が始まり、俺たち三人は、体育館の舞台袖で吹奏楽部の演奏を聞いていた。  耳にしたことのあるトランペットのメロディが流れる。  ついこの間まで、弘が練習していた曲だと気づいた俺は、隣にいる彼をちらりと見た。弘は音が出ないようにして、ベースの弦を触っていた。  その手の動きを見て『茜色のたからもの』の伴奏だと分かった。 「――よし、終わったみたいね」  吹奏楽部の演奏が終わり、体育館が拍手喝采に包まれる。俺は自分の手を見た。  少しばかり震えているが、ギターを弾けないほどじゃない。  優さんが立ち上がった。 「TUXEDO CAT 始動よ」  俺たちは頷きあった。 △  優さんのドラムをステージ後方にセットし終わり、ステージブザーがなった。  暗幕が開かれる。  ドラムスティックを構える優さん。  エレキベースに手を添える弘。  そして俺は気づいてしまった。  ヤバい……。やらかした……。
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加