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俺はポケットを探った。
無い無い無い!
俺の不自然な動きを見て、弘が小声で話しかけてきた。
「どうした、蓮?」
トラブルか? 弘は心配そうに俺を見た。
「ピックがないんだ。落としたかもしれない」
「私、ステージ袖を見てくるわ!」
聞き耳を立てていた優さんが、小走りで向かった。
そして黒い暗幕の隙間からひょっこりと顔を出すと、手で小さくバッテンを作った。
「おう、マジか」
弘が呟く。
「蓮、何か代わりになるもの、持ってるか?」
例えば、一円玉とか……。
ナイスな提案をしてくれたのだが、俺はキャッシュレスで買い物をするので、小銭を持っていなかった。
始まらない演奏に、会場がざわめき始める。
二人とも、ごめん。
そう謝ろうとしたときだった。
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