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「なんだ。まだ、なにも説明を受けていないのか?」
彼の強い口調での問いかけに、エルーシアはすぐに言葉を返すことが出来ない。
だって、それではまるで食事をしていたことを責められているようだったから……。
「隊長。エルーシアさまは、空腹でした。まずは、お食事をするのが道理というものです」
エルーシアの態度を見て、カタリーネが反論してくれる。男性は特別な反応を示すことはない。ただ、じっとエルーシアを見つめているだけだ。
「……とにかく。今後、俺たち騎士団はお前を保護することになっている。しばらくの間、この部屋を使え」
男性がそう言って、立ち上がる。その姿をエルーシアがぼうっと見つめていれば、彼がエルーシアをじっと見つめていることに気が付いた。その目は鋭くて、不快そうな感情を隠してはいない。
「あとの説明は、カタリーネから聞け。生憎、俺は忙しいんだ」
「……あ、は、はい」
確かに男性は先ほどから『隊長』と呼ばれている。それなりの役職についているのは、間違いないだろう。
だから、エルーシアは慌てて頷いた。でも、少ししてハッとしておずおずと口を開く。
「差し支えなければ、お願いが……」
「……願い、だと?」
「はい。あなたさまのお名前を、教えていただけませんでしょうか……?」
名前を知らないと、彼との会話に支障が出る。
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