第1章 保護されて、結婚

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「……いえ、全然いいです。アドネさまは、あぁいうお方なのでしょうから」  出来る限りにっこりと笑ってカタリーネにそう声をかける。彼女は一瞬だけ目を見開いたものの、すぐに頷いてくれた。 「はい。ただ、すごいきれいなお顔、されていますよね」  ふとカタリーネがそう零す。それには、エルーシアも完全に同意できた。 「なんでしょう。顔のパーツの一つ一つが、完璧な場所に配置されていると言いますか……」 「エルーシアさまもそう思います? あの顔立ちなので、隊長、とってもモテるんですよ!」  パンっと手をたたいて、彼女はそう教えてくれる。エルーシアには、関係のないことではあるのだが。 「ただ、その。元の性格が……その」  けれど、すぐに視線を彷徨わせて言いよどむ。カタリーネの言いたいことは、エルーシアにもよくわかった。 「人嫌いですし、冷酷ですし。人の子なのかって、囁かれることも本当に多くて……」 「……人の子なのは、間違いないでしょう?」 「そういう比喩ですよ」  真面目に問いかけたエルーシアに、カタリーネは笑いながら答えてくれた。  ……どうやら、受け取り方を間違えてしまったらしい。 「あんなお人ですけれど、尊敬できるところは本当に多くて。……だから、部下もついていくんだと思います。もちろん、私も含めて」 「……カタリーネさまは、騎士なのですか?」 「今更ですか? そうですよ。私、この部隊唯一の女騎士です!」  ぽかんとしながら頭の中に浮かんだ疑問を口にしてみると、彼女は笑ってくれた。 「だから、エルーシアさまの世話役になったんですよ。……同性のほうが、いいからって」  にっこりと笑ったカタリーネのその姿は……とても、慈愛に満ちているようにも見える。  もう何年も、人のそういう笑みなんて見ていない。だから、だろうか。  エルーシアは、彼女と親しくなりたいと心の底から思っていた。
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