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「……いえ、全然いいです。アドネさまは、あぁいうお方なのでしょうから」
出来る限りにっこりと笑ってカタリーネにそう声をかける。彼女は一瞬だけ目を見開いたものの、すぐに頷いてくれた。
「はい。ただ、すごいきれいなお顔、されていますよね」
ふとカタリーネがそう零す。それには、エルーシアも完全に同意できた。
「なんでしょう。顔のパーツの一つ一つが、完璧な場所に配置されていると言いますか……」
「エルーシアさまもそう思います? あの顔立ちなので、隊長、とってもモテるんですよ!」
パンっと手をたたいて、彼女はそう教えてくれる。エルーシアには、関係のないことではあるのだが。
「ただ、その。元の性格が……その」
けれど、すぐに視線を彷徨わせて言いよどむ。カタリーネの言いたいことは、エルーシアにもよくわかった。
「人嫌いですし、冷酷ですし。人の子なのかって、囁かれることも本当に多くて……」
「……人の子なのは、間違いないでしょう?」
「そういう比喩ですよ」
真面目に問いかけたエルーシアに、カタリーネは笑いながら答えてくれた。
……どうやら、受け取り方を間違えてしまったらしい。
「あんなお人ですけれど、尊敬できるところは本当に多くて。……だから、部下もついていくんだと思います。もちろん、私も含めて」
「……カタリーネさまは、騎士なのですか?」
「今更ですか? そうですよ。私、この部隊唯一の女騎士です!」
ぽかんとしながら頭の中に浮かんだ疑問を口にしてみると、彼女は笑ってくれた。
「だから、エルーシアさまの世話役になったんですよ。……同性のほうが、いいからって」
にっこりと笑ったカタリーネのその姿は……とても、慈愛に満ちているようにも見える。
もう何年も、人のそういう笑みなんて見ていない。だから、だろうか。
エルーシアは、彼女と親しくなりたいと心の底から思っていた。
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