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その日の夜。ぼうっとしつつ、エルーシアは窓の外を見つめた。
夜空には星が瞬いている。エルーシアは素直にそれを綺麗だとは思えなかった。
(……私は、本当に捨てられたのね)
少し前。エルーシアはカタリーネによる事情聴取を受けた。部屋にはエルーシアとカタリーネのほかに数人の騎士。そこにアドネはいなかった。そりゃあ、彼は隊長なのだ。忙しくしているのだろう。
そして、エルーシアはカタリーネによって、ことの顛末を聞いたのだ。
あの場に騎士団がいた理由。それは、シャウエルテ子爵家に犯罪の容疑がかかっていたためらしい。事情聴取として王城に呼び出していたものの、彼らは指定の日時に来ることはなかった。
しばらく様子見をしたのち、邸宅に突撃した。すると、そこはもぬけの殻だったそうだ。
子爵家の人間も、使用人も。皆そろって、姿を消していた。……たった一人、エルーシアを除いて。
騎士団の面々はエルーシアを見て驚いたそうだ。何故ならば、あまりにも身なりが悪く、挙句栄養失調の兆候が見られたから……ということだ。
(騎士の方々曰く、子爵家の面々の姿が最後に目撃されたのは、一週間前。……私は一週間、お水だけで過ごしていたのね……)
そりゃあ栄養失調にもなるはずだと、自らを納得させる。
両親に捨てられたことを、エルーシアは確かに悲しんでいる。もしもあのとき、騎士たちが突撃してくれなかったら……と思うと、気が気じゃない。背筋が凍るような気持ちにもなる。
でも、不思議と案外これでよかったのかも……と思う気持ちも、少なからずあるのだ。
「私は、あのおうちのお荷物だから」
だから、両親はエルーシアを捨てたのだ。双子の妹だけを連れて、失踪したのだろう……。
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