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「なんて、感傷に浸っていても、仕方がないわ。ここではお腹いっぱい食べさせてもらえるし、ふわふわの毛布だって、貸してもらえるんだから」
その呟きは、自分自身に言い聞かせるかのような言葉だった。
心の底からそう思っていないわけではない。ただ、やっぱり。目が覚めたら自らの世界が様変わりしていたことに、驚きを隠せない。
「……そういえば、保護の期間が終わったら、私はどうなるのかしら……?」
カタリーネ曰く、保護の期間は二週間から三週間を予定しているそうだ。つまり、遅くても三週間後にはエルーシアはここから放り出されることになる。
……頼れる人間も、お金もない自分が、たった一人で生きていけるとは思えない。
「……私が、悪いのよね」
ふと、言葉が零れ出た。
小さな頃、両親はエルーシアのことも双子の妹のことも、平等に愛してくれていた。
それが変わったのは――エルーシアが六歳の頃。双子の妹と激しい喧嘩をして、魔力を暴走させたことがきっかけだった。
その暴走した魔力は、双子の妹を攻撃した。彼女は全治二ヶ月という大けがを負い、以来エルーシアを避けるように。
それだけならば、まだマシだった。あれからというもの、エルーシアは度々魔力を暴走させてしまうようになったのだ。
人を傷つけ、家具を壊し、家の中をめちゃくちゃにして……。そのたびに、両親や使用人たちの目が冷たくなるのがわかった。彼らはまだ幼いエルーシアに対して、恐れを抱いた嫌悪感を向けて来た。
両親はエルーシアを持て余し、別邸の一室に魔封じをかけ、そこにエルーシアを閉じ込めた。
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