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あれからというもの、エルーシアはずっとあそこにいる。あそこだけが、エルーシアの世界だったのだ。
「魔力をコントロールできない私が、悪いの。……だから、みんなを傷つける」
エルーシアの魔力は感情が昂れば昂るほど、暴走する確率が上がる。まるで、エルーシアの感情を周りに伝えているかのように……。けど、皮肉なものだ。それがエルーシアをどんどん不安定にさせていくのだから。
「きっと、カタリーネさまも。本当の私のことを知ったら、怖がるんだわ……」
そう思ったら、自然と涙が零れた。
はらはらと涙が頬を伝って、毛布の上に零れ落ちる。身体の奥底が、熱くなるような感覚に襲われた。
(あぁ、ダメだわ。これは――予兆)
エルーシアはこれを何度も経験している。魔力が暴走する予兆だ。
必死に気持ちを鎮めようとするものの、上手く行かない。頭の中が真っ白になって――体内から魔力が出て行こうとする。
ぎゅっと毛布を握りしめて、耐えようとする。上手く我慢しなくちゃ――と、こらえすぎたのだろうか。エルーシアの胸がぎゅっと苦しくなる。
「……いや、やだ、怖い……」
寝台に倒れこんで、エルーシアは毛布を抱きしめた。心臓が締め付けられるように痛い。息が吸えなくなっていく。
――身体中が沸騰するように熱くて、たまらない。
このままだと、身体が壊れてしまうんじゃないか。頭の中に一抹のそんな考えが浮かんだ。
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