第1章 保護されて、結婚

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 頭がふわふわとする。意識も朦朧としてきて、頭が上手く働いてくれない。  ただ、唯一わかることといえば。 「……お腹空いた」  ぐぅっと弱々しく鳴るお腹が主張する通り、自分がとても空腹だということくらいだろうか。  お腹と背中がくっつきそうになるとは、まさにこのことなのだろう。元より食事の量は少なかったが、ここ数日はパンひとかけらすら口に入れていない。 (パンが欲しいなんて、贅沢は言わないわ。サラダでも、スープでもいい。ううん、むしろ野菜の切れ端でもいい……)  だから、なにか口に入れたい。そのまま咀嚼して、飲み込んで。幸せをかみしめたい。  そう思っても、現実はなにひとつとして変わらない。  ちくたくと進む時計の針。施錠されたまま開かない扉。  いつもならば一日二回、使用人が食事を持ってくるというのに。ここ数日、それもない。 「……このまま、私は死んじゃうのかしら……?」  思い返せば、あまり幸せな人生ではなかった。
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