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「言葉通りの意味だ。お前と騎士の誰かが結婚する。わかるな?」
アドネはわかりやすい言葉に変えてくれた。が、そんなこと急に納得できるわけがない。
助けを求めるようにカタリーネに視線を向ける。彼女はぽかんとしているようだった。
……多分、役に立たない。
「で、でも、その……」
口をもごもごと動かして、それが無理な理由をでっちあげようとする。しかし、追い打ちをかけるようにアドネが口を開く。
「これが嫌ならば、お前を身一つで放り出すことになるな。……それでも、いいのか?」
それは一種の脅しのようだった。
エルーシアはそう思うが、自分に選択肢はないような気がしてしまう。
「大体、こちらだってこれは不本意なものだ。騎士にはな、いくつかの決まりがあるんだ」
アドネはそう言うと、先ほどまで医者が座っていた椅子にドカッと腰を下ろした。
「まず、騎士の結婚相手は国の上層部が決める」
「……え」
「それから、騎士がともに住んでいい異性は血のつながった身内。もしくは配偶者のみ」
「……あの」
「使用人でさえ、別邸に住まわせなければならない。……面倒なんだよ」
淡々と続けられる言葉。……つまり、アドネは。
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