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(騎士の方が私の世話をするためには、結婚しないといけないとおっしゃっているのよね……?)
使用人として敷地内に住むことは可能だろう。けれど、エルーシアには使用人として働いた経験もない。それを踏まえて、アドネはこの提案をしてきた。
「国の上層部に打診をしたところ、力を悪用されかねないということで許可が下りた」
「……はぁ」
どうやら、想像以上にエルーシアは危険人物のように思われているらしい。
まぁ、魔力が最大限に暴走すればどうなるかわからないので、妥当な判断とも言える。
「と、いうわけだ。納得できたな?」
アドネがちらりとエルーシアを見つめて、そう問いかけてくる。
正直納得は出来ていない。ただ、必要があるということはわかった。
「言っておくが、誰が娶ることになっても形式上の関係だ。書類上で夫婦になるだけ、ということだな」
「……はい」
それは政略結婚に近いのかもしれない。違うのは、子を設ける必要がないということくらいだろうか。
「後日、お前を娶る騎士が決まる。……それまでは、ゆっくりと身体を休めておけ。以上だ」
そう言って、アドネは立ち上がって部屋を出て行こうとする。そんな彼を呼び止めたのは、意外にもカタリーネだった。
「隊長。……その、それは、いくらなんでも酷ではありませんか?」
彼女は意を決したように、アドネに抗議をしていた。その声を聞いたアドネは、鬱陶しそうに振り返る。
橙色の目には相変わらずなんの感情も映っていない。
「そうだな。この方法は、こいつにとっても。そして、結婚する騎士にとっても酷なものだ」
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