第1章 保護されて、結婚

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「すみません、昼食の残りしかなくて……」  女性は食事を載せたトレーを持って、エルーシアのほうに近づいてくる。 「軽く温めてきたので、食べる分には問題ないと思いますよ。どうぞ」  水差しをどけて、そこにトレーをおく。トレーには大きなお皿が載せられている。そして、その上には……小さな三つのパンがある。さらには野菜炒めらしきもの、デザートなのかカットフルーツ。深い器には、黄金色のスープが注がれていた。 「……わぁ、食べて、いいんですか?」  一応とばかりに確認すれば、女性はにっこりと笑って頷いてくれた。  なので、エルーシアはフォークを手に取る。まずは……と野菜炒めを口に運んだ。味付けは少し濃いものの、栄養があるのがわかる。今まで食べていた野菜はほとんどが切れ端だった。だから、野菜がこんなにも美味しいものだと思わなかった。 「ねぇ、これはなにかしら?」 「そちらはコンソメスープですよ」 「……美味しそう」  エルーシアの問いかけに、女性はニコニコと笑って答えてくれる。  それが本当にありがたくて、エルーシアは久々に笑みを浮かべることが出来た。 (パンなんて、すっごくふわふわだわ。今まで硬いものしか食べたことがなかったから、こんなものがあるなんて知らなかった!)  エルーシアにとって、パンとは保存のきく硬いものだった。でも、今。自分が食べているものは違う。  柔らかくてふわふわで、口の中が幸せいっぱいになる味だ。 「ところで、ですね。食事が終わったら、色々と聞きたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」  エルーシアが食事をある程度進めた頃。女性が申し訳なさそうにそう問いかけてくる。  ……聞きたいこと。 「はい、別に大丈夫です」  なにを聞かれるのかは、大方予想が出来ている。それに、こんなにも美味しい食事を貰ったのだ。その恩にくらいは報いたい。
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