第1章 保護されて、結婚

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 吐き捨てられた言葉は、とてもひどいものだった。  でも、エルーシアだってわかっている。自らが貧相な人間であり、レディ扱いされないことくらい。  (当然のことを言われて、傷つくなんてことはないわね)  心の中だけでそう思っていれば、男性が椅子を持ってエルーシアの側にやってくる。すぐそばに腰かけて、脚を組んだ。 「……さっさと事情聴取を始めるぞ。名前と年齢、身分。ほか、諸々教えろ」 「隊長!」  男性の傲慢な態度に気を悪くしたのか、カタリーネが声を荒げる。  が、エルーシアはこくんと首を縦に振ってフォークをトレーの上に戻した。 「私は……エルーシアと、申します。年齢は十九です」 「家名」 「……シャウエルテ、です」  促されて、ためらいがちに自らの家名を口にする。男性は頬杖を突きつつ、カタリーネに視線を向けた。 「と、言うことらしい。この女はあの家の人間だそうだが?」 「……戸籍には、確かに長女としてエルーシアというお名前があります。……間違い、ないかと」 「そうか」  カタリーネの不満そうな声に、男性はこれまた淡々と言葉を返した。  その後、彼の視線がエルーシアに向けられる。橙色の目は、何処か冷めきったようなオーラを醸し出している。温かみなんて、ちっともなかった。 「さて、今からお前に残酷な真実を告げることになる。……聞く勇気は、あるか?」
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