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15. ロールキャベツ
「私、福島県の出身なんだけれど、小学校の同級生が味噌蔵の家の子でね。その子と料理の話をしていたら、その子の家は、ロールキャベツを味噌味で作るって言ってたの」
「味噌味?」
新は驚いたように繰り返した。
「そう。それで私、それがどんなものか食べてみたくてね。母に話したら、相手のお母さんにレシピを聞いてくれて、それで作ってくれたことがあったのね」
ロールキャベツのひき肉にも味噌を混ぜ込み、和風出汁の味噌スープでコトコト煮るのだが、優しい味で美味しかった。
「スープのまま出してもいいし、汁は少なめにして、味噌とマヨネーズを合わせたタレを別で作ってそれをかけて食べても美味しかったわよ」
それ以来、八木橋家のロールキャベツは味噌味が定番になった。
そんな話を加恵がしていると、黙って聞いていた新の目がきらきら輝きだした。
「それなら和の総菜になるよな。すごくいい案だよ。ありがとう。早速、明日、試作品作ってみるよ。加恵さん、ありがとう!」
新は高揚した面持ちで、何度も何度もありがとうと言った。
「俺さ、こんな仕事の悩みとか、人にはあんまり話したことないのに、加恵さんには話せるんだよな。なんでだろう」
二人で洗い物をしながら、新が言った。
そんな風に言ってもらえるのは嬉しいことだった。それに加恵は、新がこんなに話しやすい人だとは思ってもみなかった。
「加恵さんはすごいからかな」
新がさらに言った。
「えっ? なんで?」
意味がわからなかった。
「お袋が、加恵さんは最先端の企業でバリバリ働いているって感心してた」
「そんなこと……」
女将さんがそんなことを言ってくれていたのかと、恥ずかしくなる。
「そんな恰好いいもんじゃないのよ……」
加恵はふと、自分の仕事の悩みを話してみたくなった。
「私も、話していい? 仕事の話」
加恵は言う。
「俺にわかるのかな? 大学も出てない、ただの職人だぜ」
新はそんなことを言うが、真っ直ぐな新の意見、男性側の意見を聞いてみたくなった。
洗い物を終えた二人は外に出た。新にマンションまで送ってもらいながら話すことになった。
「仕事でね……」
加恵は新しいプロジェクトの話をもらったが、元夫と関わることになるので迷っていると話す。話の流れで、夫との離婚理由も話すことになった。
「加恵さんはどうしたいの? やっぱり、元の旦那さんと一緒の仕事はつらい?」
「どうなのかしら? もうつらいというのはないかも」
そこで加恵は言葉を切って、迷いの原因について考える。
「ただ、平常心でいられるのかは自信ないかな。周りも私達のことは知ってるはずだし、そういう中で、そういう目で見られながら、自分がきちんと行動できるのかなと心配なのかも」
「その……」と新は一瞬言葉に詰まる。
「旦那さんに未練はないの?」
「未練?」
加恵は繰り返す。
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