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康哉はそれでずっと、男が好きな事を隠していたんだろうな。
あれ?でも俺、昔は女の子が好きだったよな。
異世界ではつい流されて男同士でやってしまったけど、今も女の子が好きなはずだよな。
「佐々木、今度女友達紹介してくれ」
なんだか胸がチクチクするような気がするけど、無視する事にしよう。俺はとりあえず彼女を作ろうと決めた。
夕方、佐々木と一緒に近所の携帯ショップに顔を出した。
お店のスタッフに状況を説明する。
「衝撃を与えたり、水に濡らしたりしませんでしたか?」
と聞かれ、心当たりがありすぎて何も言えなかった。
でも王宮ではまだ動いていたよな。最後に見たのは転移する直前だ。
「直らないんですか?」
「新しいのにしろよ。とにかく最新機種がいいぞ!」
結局修理に出すことにしたけど、スタッフ曰く直るかどうか怪しいので、最新機種はいかがですか?という事だった。つまり佐々木と同じだ。
修理に出した代わりに別の格安携帯を借りて携帯ショップを後にした。
写真、もう見られないんだろうか。もう異世界にも戻れないのに。
写真も動画も(アニキの動画はともかく)持っていても会えなくて切なくなるだけなら、消えてしまってもいいのかもしれない。
画像だけ持っていても、それは俺の自己満足で、異世界のみんなは数年もすれば俺の顔も忘れてしまうだろう。
「……でもヘコむ」
しゃがみ込んだ俺を佐々木が慰めてくれる。
「元気出せよ。食欲あるならお前の好きなラーメン唐揚げ定食おごるからさ」
一週間ぶりのラーメン唐揚げ定食は胃に染みた。
美味すぎて涙が出そう。
佐々木にお礼を言ってラーメン屋で別れ、コンビニに寄って異世界で食べたかったいろいろな物を買い込む。
おにぎりやカップラーメン、スナック菓子、ジュース、あとは漫画雑誌。
コンビニ袋を抱えてアパートまで歩き、暗い部屋に戻る。
昨日は康哉がいたけど、今日はいないから寂しい。
元気になったから、康哉ともっと異世界の話をたくさんしたかったのに。
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