ずっと親友だと思っていたのに

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とりあえず部屋でベッドに横になると漫画雑誌を開いた。 漫画の中では異世界に飛ばされた主人公が特殊能力に目覚めて、敵をなぎ倒していく。フライパンの俺と違いすぎて笑ってしまう。 こんな感じでゆっくりと、俺は日常を取り戻していった。 *** 異世界から戻ってきて、あっという間に十日近く過ぎた。 昼は大学に通い、バイトをして、バイトのない日は大人しく帰宅。 友人達はこぞって俺のイヤリング(ピアスだと思われているが)と指輪にツッコミを入れ、お前は変わったとか、恋人が出来たのかとか、痩せて筋肉がついたと言われた。 修理に出した携帯電話は直らなかったので、結局俺も最新機種に変える事にした。 佐々木に女友達を紹介してほしいと軽く頼み、康哉に携帯を変えた事を連絡する。 あれ以来康哉からは全然連絡が来なかった。 今までなら、数日に一度は連絡があったのに。携帯電話が壊れていたからだと思っていたけど、こっちから連絡しても何の音沙汰もない。 大学が違うから会おうと思わなければ会えない。それで休みの日に康哉のマンションに行ってみる事にした。 バイトもない休日、俺は電車で康哉のマンションに向かっていた。 康哉の住むマンションまでは電車で二駅ほど離れている。買ったばかりのスマホで康哉に暇な日を聞いてみたけど返事は来なかった。 もしかして何か病気になって倒れてるんじゃないかと心配になったから、勝手に訪問する事にした。異世界トリップしてストレスたまってたかもしれないし。ストレスは万病のもとだ。 康哉の住む駅に近づく頃には、電車内も人が増えてきた。休日でも街には人が多い。 ん? ドアの近くに立っていたら、何か気配を感じたので振り返る。 周りにいるのは高校生の集団と、サラリーマンのおじさんと(休日出勤かな)オタクみたいな若い男。 いろんな格好の人がいるよな、異世界にはかなわないけど、とドアの方を向いた時、再び違和感を感じた。 何だこの生暖かい風。 ぞわりと鳥肌が立つ。 誰かの吐く息が俺の首筋にかかってる。何て言うか、気持ち悪い。 移動しようとしたら、誰かにお尻を撫でられた。 「ちょっ……」
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