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「大丈夫だ。ただの精神的なものだから。父親がまた違う女と会ってるから腹を立ててるんだろう。父親への恨みを俺にぶつけてくるんだから正直辟易してるよ」
そういえば、康哉の口から家族の話を聞いた事がほとんどなかった。
異世界にいた時も、こっちの世界に未練がないって言ってたし。
「早く離婚すればいいと思うのに、世間体や金銭やプライドが絡むから、なかなか別れられないんだろう」
「康哉んち、大変なんだな……」
「修平の母さんは、優しくて可愛いひとだったよな。うちとは大違いだ」
確かにうちは浮気とかそう言うのはなかったけど。
「修平の家は、俺から見れば理想の家庭だったよ。うちは昔から冷えきってる。だから、女性にも結婚にも何の期待も持てないんだろうな。あの両親の血が俺にも流れていると思うと、自分にも失望する」
淡々と言う康哉に、なんだか胸が痛くなる。
「康哉の両親の事は知らないけど、康哉はいい奴だ。だってほら、俺に弁当作ってくれただろ?だから失望とか言うなよ……」
「あの時修平、見ていられないくらいにどんどん痩せていくから、意地でも俺が食わせてやろうと思って」
「今の自分があるのは康哉様のおかげです」
大げさに手を合わせて拝むと、康哉はちょっと笑った。
俺もそうかも。
小学生の頃から妙に大人びていて、大して笑わない康哉を笑わせてやろうと意地になってた時があった。今でも康哉を笑わせたい。
「俺に出来る事があるなら力になるからさ。何でも言ってくれよ」
そう言うと、康哉はせっかくの笑顔を消して真顔になった。
何かまずいこと言っただろうか。
「康哉?」
「実は……ここ数日、母親の事もあって忙しかったのも事実だけど、それとは別に、やっぱり修平と会うのはやめようと思ってた」
え!?
「な、何でだよ!」
そういえば異世界でもそんな事言われたぞ。
あれってこっちの世界でも有効だったのか。
いや、俺が勝手に無効になったと思い込んでただけだ。
康哉は半獣の王様になりたがってたし、無神経な俺が嫌になったとか言ってた。
「言ったろ。お前を好きでいる事に疲れたんだ」
うっ……。
完全に俺の性格へのダメ出しだ。
「大体あの両親の血を引く俺が、他人と上手く付き合えるとは思えない。父親は浮気性で冷淡、母親は粘着質の甘え下手だ」
実の両親の事をそこまで言うか?
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