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俺と会っていても、康哉が登場するとキラキラした目で康哉ばかり見ていた。
みんなそんなに顔のいい男が好きなのか?他に好きになる所はないのかよ。
黙って飲み食いに専念していると、佐々木に
「あれ?修平、松田とケンカしてんのか?何にも話さないなんて珍しいな」
と突っ込まれた。
「嫌いな肝試しに連れて行かれたからな」
「そういえばお前、霊感あるもんな~」
佐々木がゲラゲラ笑ってる。
しばらく佐々木と佐々木の彼女に霊感持ちあるあるを披露して、それからトイレに向かった。
もしかしたら、康哉が俺を嫌いになったん
じゃなくて、俺が康哉を嫌いになったのかもしれない。
トイレに行って、手を洗って、鏡の中のさえない自分を見ながらそう思う。
久々に会ったのに話をしたくないとか初めてだ。
異世界の画像を勝手に消されたから怒ってるのかも。
大体あいつの、なんでも秘密にしてしまう所が嫌いだ。
なんでも出来て、頭も良くて、スタイルも良くて、モテて、それなのにたいして喜びもしない冷めた所も嫌いだ。
好き勝手な事ばかり言って勝手にいなくなる所も、俺のコンプレックスばかり刺激する所も。
「はぁ……」
もう帰りたいと思いながら戻ろうとすると、トイレのドアが開いて何故か康哉が入って来た。
げっ。
気まずさの象徴みたいな男が目の前に。
さっき嫌いだと思っていたばかりなのに、突然目の前に現れるときつい。
何も言葉が出なくて、取りあえずトイレを出ようとすると、腕を掴まれた。
「な、何だよ……」
「彼女でも欲しくなったのか」
「康哉に関係ないだろ。俺とはもう連絡取らないんじゃなかったのかよ」
どうだ、図星だろ。
何も言い返せないだろと思っていたら、いきなり腕を引っ張られて個室に連れ込まれる。
「な、何!?」
個室は狭いし、自然と身体が密着する。康哉の方が背が高いし力も強い。
腕を回されて身動きも取れず、抗議しようとしたけど、康哉の視線に言葉を飲み込む。
じっと俺を見る康哉。
目が全然笑ってない。何かに怒ってるのか?何で怒るんだよ。怒りたいのは俺の方だ。
「康哉……」
康哉は掴んでいない方の手で俺の顔を撫でる。心臓がドクドクと打っているのに気づいた。康哉が近い距離にいる。あの、異世界の兵士の部屋で抱かれた事を嫌でも思い出す。
康哉がゆっくりと顔を近づけてきて、唇が重なった。
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