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だから、泊まっていくなんて本当はあまり期待していなかった。俺のアパートはボロいし、風呂はトイレとシャワーが一緒で足もろくに伸ばせないからな。
「……修平?起きてるのか」
「あ、ごめん。起こしたか?」
「いや、あまり眠れないんだ」
それは狭くてボロいからかな。
「康哉、潔癖性だもんな」
「そうじゃない」
康哉は俺の身体に腕を回して抱き寄せる。
ふわりと康哉の髪から俺のシャンプーの匂いがして、なんだかどきどきする。
「修平が隣で寝ているから……興奮して眠れない」
「俺のこと嫌いだって、疲れるからもう会わないって言ってたのに」
「実際疲れるよ」
やっぱりそうなのか。
康哉は俺にくっついたまま、俺の右手を握った。
「お前、飲み会に指輪していってどうすんだよ」
康哉が言っているのはルーシェンの指輪の事だ。さすがに独身なのに左手の薬指はまずいかと思って右手に変えてるけど。
「……やっぱり駄目かな」
「女ってのは、そう言うところをいちいち見てるんだよ」
「別に、彼女を作ろうと思って行ったわけじゃないし」
「へぇ」
「康哉こそ、女の子と遊びたかったんだろ」
ムキになって言うと、康哉は笑って俺の額にキスをした。
「……もう会わないようにしようと思ってたのに、駄目だな俺は。お前も来てくれよって佐々木に言われた時に、すぐに断れなかった。修平も来るからって言われてさ……」
康哉はひとりごとみたいに続けた。
「お前の顔が思い浮かんで……我慢していたのに会いたくなって。会うと腹がたつのは分かってるんだけどな」
「ごめん」
「指輪をしてるのも、イヤリングをしているのも見ればイラつく。佐々木と仲良く話しているだけで、心の中は嫉妬でいっぱいになる。もちろん女と話しててもな。疲れるの分かるだろ」
そういう苛立ち……!?
「でも、この指輪はお前の大切なものなんだろ。イヤリングも。だから、外してくれと言えない。言えたら楽なのに、そんな事を言う権利は俺には無いから」
言えないけどイライラするから距離をとったのか。
俺は完全に嫌われたんだと思ってた。
異世界で奴隷にされかけたし、決して嫌いじゃないけど、いろんな人にあんな事やこんな事をされたから。潔癖性の康哉に携帯電話の動画とか見られたんじゃないかと思ってた。
「康哉、俺さ……指輪は外せない。イヤリングも」
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