ずっと親友だと思っていたのに

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俺もたいがい自分勝手だ。でも、これだけは駄目なんだ。 指輪には何度も命を救われた。イヤリングはそもそも外せないし、アニキは鬼畜だけど命の恩人で、二人が俺に託した思いを、簡単に捨てられる訳がない。 「奴隷にされかけた時に助かったのは、この二つのアクセサリーのおかげなんだ。これがないと、多分康哉にも会えなかったし、日本にも戻れなかった。だから理解して欲しいんだ。康哉がこれを見たらムカつくかもしれないけど、俺はそれでも康哉に会いたい。勝手かな?」 康哉はしばらく黙っていた。 「康哉は俺にまいってるんだろ?好きだから俺にはかなわないんだろ?だったら許してくれよ。俺、康哉に会えないと悲しいんだ。だからまた前みたいに会ってくれよ」 康哉はため息をついた。                「お前って本当に勝手だな」 「康哉だって勝手にいなくなるじゃないか」 「そうだな」 康哉は握った手の中にある指輪をじっと見つめた。 「分かったよ。やっぱり俺の負けだ。お前には逆らえない」 「ありがとう」 「ただし……」 「ん?」 康哉が起き上がって俺に覆いかぶさる。 「前と同じようにっていう関係は無理だな。会えば絶対に抱くけど、それでもいいのか?」 そう言った康哉の声は妙に艶っぽくて、思わず唾を飲み込んでしまう。 「い、いいぞ」 「そうか」 嬉しそうな康哉の顔が近づいてきて、俺は目を閉じた。 *** 翌朝、康哉は俺より早く起きて朝食を作ってくれた。 パンとコーヒーと、目玉焼きにサラダに新鮮な果物。 しかもいつも食べている食パンと違って美味い。昨日の夜に買いに行ったみたいだ。俺のアパートの冷蔵庫、飲み物しか入ってなかったからな。 一緒に朝食を取りながら、ゆったりとした時間を過ごす。 「修平、身体大丈夫か?」 「ああ。大丈夫」 ゴム付けてくれたからかな。身体が楽だ。もちろん腰は少し痛いけど。 今日はどうする?と聞かれて、二人で出かける事にした。 でも、特にどこに行くでもなくドライブして、気づけばあの廃屋に向かっていた。 もちろん昼間に行っても魔方陣はない。 昼間に見る廃屋は、恐ろしさも何もなくて、何だか不思議な気持ちになった。 入ってみれば室内はそれほど古くもない事に気づく。 たった四カ月前なのに、かなり昔の出来事のような気がした。
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