ずっと親友だと思っていたのに

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「ハルバートは、もうここは使わないと言ってた」 並んで二人がけのソファーに座り、康哉がそんな事を言った。 「そっか」 「異世界なんて誰も信じないだろうな」 「ああ」 何も無い部屋の床を眺め、お互いにしばらく無言になる。多分俺も康哉も異世界の出来事を思いだしてたんだと思う。それは全然違う思い出。 「修平……」 「なんだよ」 「お前まだ、異世界に未練あるのか?」 「まあ……楽しかったし。竜とか、魔法とか、見たこともない景色がいっぱいで、正直言うともう二度と行けないのはショックだ」 「そうか」 「康哉は?半獣の王様続けたかったのか?」 「……まあ、な。懐いてくるやつらはかわいいだろ」 「俺が連れて帰った事、怒ってるのか?」 「それはお互いにそうだろ」 「そうだな」 顔を見合わせて笑うと、どちらからともなくキスをした。車に乗って山の中の廃屋から、街へと戻って来る。康哉が夕食を作ってくれると言うので近所のスーパーに寄って食材をあれこれ選んだ。 康哉は普段俺が絶対に買わないようなもの、例えば調味料とか、野菜とか、調理前の肉や魚を購入していた。 俺が買うものといえば、総菜とか弁当、あとはインスタントラーメンに冷凍食品、飲み物とお菓子だ。 「鍋とフライパンしかないけど」 「包丁くらいあるんだろ?」 「一本だけ」 「それなら大丈夫だ」 料理が出来る奴は違うな。 アパートに帰ると、さっそく料理を始めた康哉を不思議な気持ちで眺める。 実際料理している姿を見るのは初めてだ。 俺が見てもはっきり分かるくらい手際がいい。野菜の皮を包丁でするする剥いていく。 「スゲー」 「普通だろ」 「いや、すごい!お前料理人とかなれるんじゃないか?」 興奮して言うと康哉が吹き出した。 「何だよ。本気でほめてんのに」 「お前、小学生の頃と言うことが同じだな」 「そうか?」 何か手伝おうとしたけど、出来ることがないので、唯一出来るお米をといで炊飯器にセットするという作業をこなした。 その後は夕食ができるまでゲームをして遊ぶ。 康哉は姉ちゃんと違って手伝わなくても怒らないし、優しい親友だ。 康哉はあっと言う間に美味しそうな料理を何品も完成させた。 「うわぁ!美味そう」 「一応、お前の好きそうな物を作ってみた」
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