ずっと親友だと思っていたのに

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「お前の、結婚して幸せなサラリーマンになるっていう夢は叶えてやれそうもないけど。考えておいてくれよな」 康哉は返事は急がないと言った。 それで二人でその年の正月休みに、タイとシンガポールに旅行に行くことにした。 初めてのタイは暑くて、異世界の気温とは違っていたけど、それでも桃花村近くの森で巨大植物を眺めていた時の気持ちを思い出した。夜のシンガポールはかなり楽しかったし、タイの遺跡や大きな河を見ていると不思議と癒された。 康哉もずっと何かを考えているみたいだった。それは王宮で別れた半獣達の事だろうか。 「康哉……」 夜中に誰も知り合いのいない国の通りを歩きながら、康哉の名前を呼ぶと、いつもと変わらない笑顔で振り向いてくれる。 「どうした?修平」 返事の代わりにキスをする。 性格はいろいろあれだけど、それは俺も同じだ。そんな俺でも一緒にいたいと康哉が言ってくれるんだから、それに応えたい。 大学を卒業したら、一緒に海外についていこう。まだ話すのはもう少し後にしようと思うけど、多分この先もどこまでも一緒だ。 さようなら、異世界のみんな。 もう会えないと思うとどうしようもなくさみしいけれど、どうか元気で。 俺は康哉の手を握り、二人で賑やかな雑踏に紛れこんだ。 おわり
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