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人嫌いのリックを無理やり襲ってしまったのに、時間がないからって自分はすぐに街を出たんだ。すごく無責任だった。
「同感だな。お前は無計画で、淫乱なだけが取り柄の馬鹿だ」
また別の声がしてそっちを見ると、盗賊のアニキがこっちに歩いてくる所だった。
「ミサキ、五年経っても俺が生きていると思うか?」
アニキが俺の頬をなで上げながら言う。
「復讐も出来ずに契約期限がきて無駄死にするのがオチだな。お前が……」
アニキが俺のイヤリングを噛んで、耳たぶがキリリと痛んだ。
「俺の復讐を邪魔したからだ。そうしておいて自分は、故郷に帰るんだな」
痛みで言葉が出てこなかった。胸の痛みだ。アニキの言うとおりだ。
「シュウヘイ……」
身体が震えた。
いつの間にかルーシェンがいて、厳しい顔でこっちを見ていた。
「そばにいて欲しかった。互いを必要だと思っていたのは、俺だけだったのか?」
『……ごめん。みんな、本当にごめんなさい』
自分が無責任で酷い人間だと感じて、涙が止まらなくなった。
***
「……修平」
『ごめん……ごめんなさい』
「修平、大丈夫か?」
寝ている間に泣いていたらしい。
康哉に揺り動かされて、目を開けると、心配そうな康哉と目があった。
「うなされていた。向こうの世界の夢、見てたのか?」
腕で涙を拭った。
情けない。皆の事を思い出して泣くなんて。考えないようにしていたけど全部責められて当然の事だ。
「泣くな」
康哉が俺の頭を撫でる。
「つらかったんだろう?もう思い出さなくていい。修平は悪くない」
「……違うんだ。俺が悪い」
康哉はきっと俺が奴隷にされた事を気にしているんだと思う。
でも、俺が辛かったのは奴隷にされた事じゃない。皆にちゃんとお別れが言えなかった事だ。
短時間だったけど、友達かそれ以上の存在になっていた。
皆にもう会えないのが辛い。
康哉と帰る事を選んだのは俺なのに、なんてわがままで自分勝手な奴なんだろう。自分にガッカリだ。
康哉に心配をかけるし、全部自分のせいなんだから泣く資格なんてない。
そう思うけど、やっぱり涙は止まらなくて、康哉の胸にすがりついて泣いた。
***
まぶしくて目が覚めた。
もう朝なんだろうか。
熱が下がったのか昨日よりかなり身体が楽になっていた。
頭が痛いのは泣いたせいだ。
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