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ベッドの中で腕を伸ばしても、康哉の身体が見つからない。
それで仕方なく身体を起こすと、すぐ近くの狭いキッチンで、康哉が誰かと電話しながら何か作っているのが見えた。
「そうなんだ。お前から言っておいてくれよ」
康哉が誰かに頼み事って珍しい。
「こ……や」
声がめちゃくちゃ掠れてる。
それでも康哉は俺の声にすぐに気づいて電話を切った。
「悪い。充電させてもらった」
そう言いながらベッドに戻ってきて、俺の額に手を添える。
「熱下がったな。念のためほら」
そう言って体温計を取り出す。
「電話……誰と?」
そんなはずないのに、半獣の面倒を見ていた康哉を思い出して、一瞬半獣の部下としゃべってるのかと思った。
そういえば康哉は面倒見がいいから、慕ってる後輩とかたくさんいたよな。
「佐々木。お前バイト一緒だったろ。俺にも連絡が来てた。修平がバイトを休んでるけど何か知らないかって」
ああそっか。
俺バイト休んでた。一応今週は二日しか入れてなかったけど、二日とも確実に無断欠勤だ。
「肝試しに行った後、熱出して倒れて寝込んでると言っておいた。あいつ、お前の霊感体質知ってるからな。妙に納得してたよ」
「……ありがとう」
康哉が俺の着ていたシャツのボタンを外して、脇に体温計を差し込む。
「康哉、母さんみてぇ」
「考えてる事は違うけどな」
「……何考えてんだ?」
「聞くなよ。言ったら引くから」
何だろう。ちょっと怖いんだが。
体温は37度だった。
もともと平熱が高いから、これくらいなら全然問題なく動ける。
「まだ少し熱があるな」
「……大丈夫」
「駄目だ。今日は一日寝てろ」
「大丈夫だって」
「お前の口癖、気づいてるか?大丈夫ってすぐに言うやつ。でもお前は何も考えてないし分かってない」
康哉が真顔でビシビシと痛いところを突いてきた。
「だから俺がいいというまで寝てろ」
「……いやだ」
「子供か」
「ずっと寝てるなんて退屈だ」
康哉がため息のような息を吐いた。
「とりあえず昼までは寝てろ」
***
それから俺は康哉の言いつけを守り、昼までベッドの中でダラダラと過ごした。
テレビを見たり、康哉の作ってくれたお粥を食べたりして過ごす。
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