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「修平、肝試しで倒れたんだろ?まさかお化けとか連れて帰ってないよな?」
「お前、見えないだろ」
「見えないけど、怖いんだよ!塩撒け塩!」
「いないって。いたら俺が怖い。普通風邪がうつる方を心配するだろ」
「馬鹿だから風邪引かないんだ。でも、修平にうつるんなら俺にもうつるかもな」
「勝手に馬鹿の仲間に入れるな」
佐々木は相変わらずだ。
お化けがいないと聞いて安心したのか、いつものように椅子にどかっと座った。
「店長も心配してたぜ」
「俺、クビかな」
「それはない。お前気に入られてるから。俺もうまく言っといてやったからな」
「体調戻ったら謝りに行くよ」
それからしばらくバイトと大学の話で盛り上がる。
佐々木と話していると、まるで以前の日常に戻ったみたいだ。
だけど佐々木が会話の途中で急にじっと俺を見た。
「なんか修平、雰囲気変わったな」
「え?変わった?」
「もしかして……彼女出来た?」
「えっ?いや、出来てないし」
「なんつーか……男として一皮剥けたっていうか、恋する乙女みたいな雰囲気っていうか」
「なんだよそれ」
言いながら妙に焦る。
佐々木はこういう所が変に鋭い。
「修平、童貞卒業したんだろ!」
「ち、ちが……」
「隠すなよ!このヤロー」
全然卒業していない。
いろいろな事を卒業したけど、童貞だけは卒業してない。
「よかったな。藤村にも言っとく。今度三人でお祝いしようぜ。修平の童貞卒業パーティー。ついでに彼女の友達紹介してくれ」
「だから、彼女出来てないんだよ」
「え?プロが相手なの?」
何でそうなるんだ。
「あ、まさか肝試しって嘘なのか?松田にプロの子紹介してもらったんだろ。初体験に興奮して熱出したんだな」
「何その恥ずかしい設定。大体なんで康哉の紹介なんだよ……」
「え、違うの?あいつ面倒見いいから、修平の童貞を心配して手配したんだと思ったのになぁ」
「お前は馬鹿か!」
ムカついたから佐々木に蹴りを入れて椅子から落としてやった。
「悪い悪い。そんな怒るなよ。修ちゃん怒った顔も可愛いけど」
爆笑している佐々木に呆れながら、可愛いと言われて内心照れている自分にもうんざりする。
おかしいのは俺の方だ。
抱かれたのは男です。そして康哉ともやってしまいました、って言ったら佐々木は引くだろうか。
パーティーどころか友達やめられるかもしれない。
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