五月晴れ、過去を漁る

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子供だった頃の記憶は匂いに宿ると君は言う 蒸した土の香りを吸い込めばいつも記憶の底に君がいる 夕景、錆びた自転車の軋んだ音が今でも鮮明に聞こえてくる。 夏の前日の予感を、あの胸の苦しさを、その心地よさを今でも私は憶えている。 「五月晴れ、過去漁る」 雨上がり、君は詩を書いている 時が経てば忘れていく物だとして 感情を紙に写す左手がひどく美しく見えた それだけは忘れたくなかった 浅い呼吸、一つ一つが喉の奥で味になる 雨上がり、蒸した風の通り過ぎる街 生きた証も絶えぬ孤独も全部消え去ってくんだ 感情なんてのは目が覚めれば忘れてるもんだろずっと 言葉にしなきゃ文字にしなきゃなんて全部延命だ 無駄なんだよ全部 全部 忘れていくんだよ
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