1人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
子供だった頃の記憶は匂いに宿ると君は言う
蒸した土の香りを吸い込めばいつも記憶の底に君がいる
夕景、錆びた自転車の軋んだ音が今でも鮮明に聞こえてくる。
夏の前日の予感を、あの胸の苦しさを、その心地よさを今でも私は憶えている。
「五月晴れ、過去漁る」
雨上がり、君は詩を書いている
時が経てば忘れていく物だとして
感情を紙に写す左手がひどく美しく見えた
それだけは忘れたくなかった
浅い呼吸、一つ一つが喉の奥で味になる
雨上がり、蒸した風の通り過ぎる街
生きた証も絶えぬ孤独も全部消え去ってくんだ
感情なんてのは目が覚めれば忘れてるもんだろずっと
言葉にしなきゃ文字にしなきゃなんて全部延命だ
無駄なんだよ全部 全部 忘れていくんだよ
最初のコメントを投稿しよう!