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 私の名前はステファニー・ベルモンド。 名門の由緒正しい伯爵家の、いわゆる御令嬢という存在だ。 ホワイトブロンドの長い髪に、まるで宝石のような緑の大きな瞳。 自分で言うのも何だけれど、なかなかの美人だと思う。 騒がしいことを好まず、群れるのが嫌い。 1人、静かに読書をして過ごす時間をこよなく愛している。 当然親しい友人もおらず、学園内では「クールビューティー」などと呼ばれている。 他にも、もう一つ私の呼び名があったようだけど……そんなのはどうでも良いことだった―― ****   いつものように中庭で昼食を頂いた私は、図書室で大好きな読書をしていた。 日差しがよく差し込む窓際の席、ここが私の特等席。 今読んでいるのは、恋愛小説。 夢中になってページをめくって読んでいると、不意に視界が暗くなった。 「?」 不思議に思って顔を上げると、見知らぬ3人の女子生徒が私を取り囲んでいる。 「ごきげんよう。ステファニーさん」 見知らぬ赤毛の女子生徒が声をかけてきた。 「ごきげんよう。……どなたかしら?」 「あなたは私のことを知らないようだけど、私はよーく知ってるわよ?」 赤毛の女子生徒は敵意のある視線を向けてくる。 彼女の取り巻きのような女子生徒たちも同様の視線だ。 「……そう。私に何か用でもあるの?」 「あるに決まってるじゃない」 「だから話しかけているんでしょう?」 2人の取り巻きが聞えよがしにヒソヒソと話している。 「大事な話があって来たのよ。どれだけ捜し回ったと思ってるの?」 赤毛の女子生徒は腕組みするとふんぞり返った。 「ふ〜ん」 彼女が捜し回ろうが、私には関係のない話。再び本に目を落とすとヒステリックな声があがる。 「何勝手に本を読んでいるのよ! 話を聞きなさいよ!」 「分かったわ」 本に栞を挟んでページを閉じ……。 「はぁ〜……」 大きなため息をついた。 「信じられない!」 「ため息をついたわ!」 取り巻き女子生徒が再び騒ぐ。 「ちょ、ちょおっと!! 聞えよがしに大きなため息をつくのはやめてもらえないかしら!?」 地団駄を踏む赤毛の少女の背後から図書室司書の女性が「ゴホン」と咳払いする。 そう、図書室では私語は慎まなければならないのだ。 「……ここは場所が悪いわ、外へ行きましょう」 バツが悪いと思ったのか、赤毛の女子生徒が小声で提案してきた。 「嫌よ」 「は! 即答!? 少しは考える素振りでもしたらどうなの!」 注意されないように再び小声で文句を言ってくる。 「何故あなたの都合に振り回されなければならないのよ。用件なら手短に、ここ で1分以内に済ませて頂戴」 図書室にかけられた時計をチラリと見れば、貴重な昼休みは残り時間が後20分しかない。 折角面白いところだったのに……これ以上読書の時間を邪魔されるのはごめんだ。 「本当に気に食わない態度を取ってくれるわね」 彼女の目が釣り上がる。 「外見だけでなく、性格もキツイのね」 「だから友人もいないのよ」 取り巻き2人の声が耳障りで仕方ない。私は彼女たちを一瞥すると無視し、赤毛の女子生徒に尋ねた。 「その前に、まずはあなたの名前を教えて頂けないかしら?」 失礼なこの赤毛女子生徒はまだ名前すら名乗っていない。 「いいわ、恋敵の名前を知っておきたいってわけね?」 フフンと鼻をならす赤毛女。 聞き間違いだろうか? 今。恋敵って言わなかった? 「まぁいいわ。こっちだって、あなたの為に貴重な休み時間を取られたくはないものね。私の名前はシビル・ワンダー。単刀直入に言わせてもらうわ。ステファニー・ベルモンドさん!! サイラス様から手を引きなさい!! あの方は私の将来の夫になる方なのですから!」 ビシッと赤毛の女子生徒は私を指さしてきた――
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