本編01.悲しき女の性

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  聞こえてるけど、聞こえないフリ。 「……何だよ。人の気も知らないで」 ブツブツと何やら呟いてるみたいだけど、駅前の雑踏の騒音に紛れてよく聞き取れなかった。 でもまぁ、私には関係ないか。 再び寝たフリをこいて、蒼の腕の中に身を委ねる。 「ん……」 そうして揺られていると、まるで揺りかごの中にいるような気分で。 まだ醒めきっていない酔いも手伝ってか、だんだんと眠くなってくる。 「……バカ姉貴」 深淵の底に落ちかけた刹那。 額に落ちる柔らかい感触と呟きは何だったのか。 それが夢か現実か分からないまま、いつの間にか私は眠りに身を投じていたのだった。  
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