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そのままそっと手のひらで頬を包み込んであげると、蒼が驚きに目を見開いた。
「あね……き?」
「そんな泣きそうな顔しないでよ。抱き締めてあげたくなるじゃない」
うわ、弟相手に何言ってるんだろ、わたし。
アルコールがまだ抜けてないのかも。
でも……何故だか放って置けなかった。
まるで行き場を失った迷子の子猫のように、自分の居場所を探し求めてさ迷っているように見えて。
胸の奥がきゅうっと苦しくなった。
「はは、こんなこと言うなんて。まだ酔っ払ってるのかな、私」
「ふ……そうなのかもな。でも……」
悲しげだった瞳が和らぎ、無表情になる。
そして、私の身体がふわりと暖かい何かの重みに包まれた。
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